研究課題
主に日本海沿岸および東北地方太平洋沿岸に分布する褐藻エゾノネジモクの年間の成長と成熟に及ぼす水温と栄養塩の影響を各月12日間の生長点培養によって明らかにした。エゾノネジモクは、5~30℃では栄養塩欠乏条件であっても死亡することなく成長したが、35℃では死亡した。どの季節においても水温15~20℃がもっとも良く成長した。平成20年度に報告した褐藻フシスジモクの成長速度は1月~5月に高く、11月にもっとも低くなったのに対して、エゾノネジモクの成長速度は季節によってほとんど変化しなかった。光合成速度も季節によってほとんど変化しなかった。7月には、富栄養条件では60~80%の成長点に生殖器床が形成された。栄養塩欠乏条件では生殖器床を形成する生長点は30~60%と富栄養条件よりやや少なかった。以上の結果、エゾノネジモクは、フシスジモクと同様にコンブ目褐藻と比較して高水温にも、貧栄養にも耐えることが明らかになった。また、エゾノネジモクではフシスジモクとは異なり、成長速度と光合成速度に明瞭な季節変化が認められなかった。光合成速度は一般的に光合成色素であるクロロフィルa量あるいは窒素含有量によって大きく変化するため、このことは栄養塩の吸収量あるいは蓄積量の季節変化が種間で大きく異なることを示唆する。平成21年度に報告したように、高水温・貧栄養な海況が継続する現在、海中林の形成が阻害される磯焼けは、植食動物の摂食圧だけでなく、窒素・リンの供給不足によって持続しているため、無機栄養塩の供給が海中林形成のための必須の要素技術となる。今後は、この2種を含む多くのヒバマタ目褐藻とコンブ目褐藻の栄養要求量など種固有の生理生態学的特性を生育過程に対応させて明らかにし、海中林の構成種に対応した効率的な栄養塩添加技術を開発する必要がある。
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