研究課題
相模湾長井沿岸において、無節サンゴモ、有節サンゴモ、およびテングサ群落内に生息する貝類を周年にわたり定量的に採集し、それぞれの種について種特異的で保守的な形態的特徴を見出し、発生直後から成員に至る連続標本を作成することにより、各種貝類の発育段階初期の同定手法の確立を試みた。その結果、出現した60種のうち主要な31種について、発生直後から成貝までの種判別を行った。このうちの28種については、本研究ではじめて発生直後からの種判別が可能となった。この種判別方法に基づき、相模湾長井の調査地点に出現する貝類主要種を同定するための検索表を作成した。これによって、各海藻群落内における各種貝類の出現動態を詳細に解析することが可能となった(21年度に実施予定)。上記の3海藻群落内に生息する主要な貝類と藻類を採集し、安定同位体比を測定することによって、各種貝類の主な餌料を推定した。無節サンゴモ群落内においては、サクラアオガイなどの3種が珪藻類を、トコブシ稚貝などの8種が無節サンゴモ類を、ヒメヨウラクはトコブシなどの貝類を主餌料にすると推定された。有節サンゴモ群落内においては、チヤツボ類などの4種が珪藻類と有節サンゴモ類の両方を餌料にし、サザエ稚貝などの3種が有節サンゴモ類を主餌料にすると推定された。テングサ群落内においては、チグサガイ類など4種がテングサ類を、ムギガイはチグサガイ類などの貝類を主餌料とすると推定された。飼育実験によって、サザエ初期稚貝がヒメヨウラク稚貝によって活発に捕食されることが明らかになった。また、ヒメヨウラクによって捕食されたサザエ初期稚貝・稚貝の殻上には穿孔痕が残ることがわかった。野外から採集された死亡個体の状態の調査結果とあわせて考えると、有節サンゴモおよびテングサ群落内に生息するサザエの初期稚貝や椎貝の生残にヒメヨウラクの捕食が強く影響することが明らかとなった。
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Proceedings of the 5th World Fisheries Congress (CD-ROM)
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