研究課題
RNA干渉法によりクルマエビリゾチームの機能が抑制されても他の遺伝子の発現は抑制されないことを、マイクロアレイを用いて網羅的に解析したところ、3倍以上の発現低下を示した遺伝子は、二本鎖RNA接種後1日目および3日目ともに、リゾチーム遺伝子以外認められなかった。さらに、クルマエビ血リンパ中の細菌叢を明らかにするために、細菌特異的な16SリボソームDNAの塩基配列を解析したところ、その約9割がグラム陰性菌由来であった。クルマエビ血リンパをHI寒天培地上で培養するとグラム陰性菌であるビブリオ属が優占することからも、クルマエビリゾチームはグラム陰性菌に対して重要な役割があると推察される。そこで、グラム陰性菌とクルマエビリゾチームとの関連を確かめるために、クルマエビに蛍光標識した大腸菌を接種し、クルマエビ血リンパを経時的にサンプリングし、蛍光顕微鏡下で細菌数を計測した。結果、リゾチームノックダウンクルマエビでは大腸菌に対する排除能を低下させ、さらにクルマエビ血リンパ中での増殖を可能にした。以上のことから、クルマエビリゾチームは生体内で少なくともグラム陰性菌の制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。抗菌タンパク質のクラスチン様タンパク質をノックダウンするとリゾチウムのノックダウンの際と同じような結果が見られたことから、クルマエビ類では一つ一つの抗菌タンパク質が免疫に重要な役割を果たしていることが示唆された。クルマエビ類の遺伝子配列情報を蓄積するために大規模EST解析を行い、約8万配列を得た。これらを基にマイクロアレイを作製することが可能となった。
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