トランスポゾンタギングによりウイルス増殖に関連する候補遺伝子断片が取得できた場合、その後の遺伝子機能の確認実験は、スネークヘッド由来のE-11培養細胞を用いるより、全ゲノム遺伝子が解読されたメダカの培養細胞を用いる方が格段に早い。そこで本年度はメダカ培養細胞(HNI-2)を材料に用いて実験を進めた。 トランスポゾンが細胞ゲノムに挿入されたかを明確に確認することが課題であったが、そのためのサザンハイブリダイゼーション系を改良した結果、ゲノム当たり1コピーのDNAを確実に検出することが可能となった。 この手法を用いてトランスポゾンがゲノムに挿入されたことが確認されたHNI-2細胞系のウイルス感受性を評価した結果、期待されたウイルス耐性の細胞系は得られなかった。本実験では、ある遺伝子にトランスポゾンが挿入されることで、その遺伝子に関して細胞がnull mutantにならなければならない。すなわち、使用する培養細胞の相同染色体の片方がなるべく多く欠落していることが望ましい。そこで、供試したHNI-2細胞の染色体数をギムザ染色法により確認したところ、多くの細胞が48あるいはそれを上まっており(メダカでは2n=48)、HNI-2細胞をそのまま使用することは非効率的と判断された。そこで、HNI-2細胞から染色体数が少ない細胞をクローニングした。そのうち、染色体数が最も少ない25本であった細胞系を用いて、同様にトランスポゾン挿入実験を行い、トランスポゾンがゲノムに導入された細胞のウイルス感受性を評価した。その結果、一部のトランスポゾン導入細胞はウイルス耐性を示した。今後、これらウイルス耐性細胞からトランスポゾンにより破壊された遺伝子を単離し、その機能を推定する。また、ウイルス耐性細胞に候補遺伝子の全長cDNAを再導入する(相補実験)ことで、ウイルス感受性が復帰するかを確認する。
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