昨年度取得した染色体数が25本であるメダカHNI-2細胞クローン(通常のメダカ個体の染色体数は2n=48)をレシピエント材料に用いて、トランスポゾン挿入による遺伝子破壊およびウイルス感染実験を進めた。 本研究では、トランスポゾン挿入により宿主因子遺伝子が破壊され、ベータノダウイルス耐性となった細胞系を得ることが最初の到達目標であるが、本年度はベータノダウイルスに耐性でかつGFP(トランスポゾンにコードされるマーカー遺伝子)を発現する細胞系を17系統得ることができた。この結果から、染色体数の少ない細胞系を材料に用いれば、トランスポゾン挿入によるウイルス耐性細胞の取得効率が上がることが示唆された。 これらウイルス耐性細胞を大量に培養してゲノムDNAを単離し、トランスポゾン内に存在しない制限酵素で切断後、inverse PCRを行った。その結果、17系統中11系統においてトランスポゾン挿入領域のメダカDNA断片を取得することができた。この部分配列を用いてEnsemblメダカゲノムデータベースに対するblastn検索を行った結果、9系統のDNAに対する類似配列が得られ、このうち5つがコード領域と予測された。これら5遺伝子の全長cDNAを取得し、それぞれが由来するウイルス耐性細胞に導入して(相補実験)、ウイルス感受性が復帰するかを検討中である。今回、トランスポゾン挿入領域の配列が9種得られたが、このうち4種が非コード領域であった。この解釈として、トランスポゾン挿入領域以外に起きた突然変異によりウィルス耐性が付与されたか、あるいはこれら非コード領域も宿主因子遺伝子の発現調節などに関与する可能性が考えられる。
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