研究概要 |
トリプシンは、消化酵素として一般的に知られているが、配偶子形成への作用に関する報告は全くない。しかしながら、トリプシンはガン細胞に対し増殖活性を持つこと、ほ乳類の精巣中にプロテアーゼ活性化レセプター(PAR)と数種類のセリンプロテアーゼインヒビター(Serpins)が存在していることから、精子形成に対し何らかの作用を示す可能性が高い。我々がクローニングを行なったウナギのPAR1及び2とSerpine2のcDNAクローンの解析により、これらのセリンプロテアーゼ関連物質は、精子形成過程の生殖細胞で発現している事が明らかとなった。更に卵巣にもトリプシンが存在している事から雌雄両配偶子形成に関連している事が示唆された。更に、ウナギの受精実験により精子に存在するトリプシン様タンパクが受精に重要な働きをする事が明らかとなった。この精子膜上にに存在する活性を持つトリプシン様物質をコードするcDNAは、カドヘリン、プロスタシン様物質、未知のセリンプロテアーゼの断片が得られているが、今回のクローニングでは受精に関連した物質を得ることが出来なかったため更にクローニングを行なう予定である。 トリプシン機能解析のためのメダカトランスジェニック系の開発では、トリプシン機能解析のための組織特異性および時期特異性が高く、かつセルトリ細胞系列で発現する導入ベクターの開発を試みている。これまでに、レポーターとしてEGFPを用いて構築した発現ベクターをメダカ受精卵1細胞期に顕微注射したものをFOで評価した結果、EGFPにDMRT1, DMYの3'-UTRを繋いだコンストラクトから作製したmRNAがセルトリ細胞系列での発現に有効であることが確認された。プロモーターとしてCMVやβ-actinを用いてEGFP+DMRT1 3'UTRを繋いだコンストラクトを作製し、同様に調べた結果、艀化から艀化後5日のメダカ生殖腺では生殖細胞支持細胞で強い発現がみられるが、他の組織でも強い発現がみられた。組織特異性をあげるために、現在、ヒートショックプロモーターとDMRT1 3'UTRを用いた発現ベクターについて検討を行なっている。
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