研究課題
昨年度研究により、アミノ酸誘導体のタウリンがトリプシンと同様減数分裂の開始に作用する可能性が示された。そこで、本年度はトリプシンとタウリンの減数分裂制御に関する相互作用を解析した。ウナギの生体外精巣器官培養系を用いて、タウリンの精巣での産生機構を調べた。タウリン合成には、システインデオキシゲナーゼ(CDO)とシステインスルフィン酸脱炭酸酵素(CSD)が関わっているが、これらの酵素のうちCDOのみがDHPの刺激により精巣での発現が遺伝子レベルで誘導され、タウリンの産生を誘起することが明らかとなった。CDOおよびCSDの精巣内での局在により、タウリンが精巣のどこで産生されているかを調べたところ、セルトリ細胞で産生されていることが明らかとなった。DHPの作用により発現が誘導されるタウリンとトリプシンの間に相互関係があるか否かを生体外培養系により解析した。その結果、タウリンとトリプシンは、精原細胞でのDNA合成を相互に促進し合っていることが明らかとなり、その機構はトリプシンがタウリントランスポーターの発現を誘導し、これによってタウリンの精原細胞内への輸送が促進されることが明らかとなった。タウリンとトリプシンの相互作用が減数分裂の制御に関わるか否かを解析した。その結果、タウリンとトリプシンの相互作用により、精原細胞で、減数分裂時の相同染色体の対合を示す分子マーカーSYCP3の発現が誘導されることから、両因子の相互作用により減数分裂が誘導されることが明らかとなった。この相互作用のメカニズムは、トリプシンが減数分裂の誘導に関わるspo11βの発現を誘導するとともに、TauTの発現を誘導し、精原細胞内にDHPの刺激により精巣内で合成されたタウリンを精原細胞内に輸送し、さらに輸送されたタウリンがspo11βのスプライシングを誘導しspo11αを出現させ、この2種類のspo11が減数分裂を誘導することが明らかとなった。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Interdisciplinary Studies on Environmental Chemistry
巻: 6 ページ: 35-40
Zoological Science
巻: (in press)
Fish & Shellfish Immunology
巻: 30 ページ: 1064-1071
Aqua-Bio Science Monographs
巻: 4 ページ: 105-129
Reproduction
巻: 142 ページ: 869-877
Amino Acids
DOI:10.1007/s00726-011-1128-3