本研究では、DEPM(Daily Egg Production Method)によるマサバの資源量推定法を確立することを目的とし、併せて、新たに開発された技術を、マイワシ等他の浮魚資源におけるDEPMの適用に際し汎用化することを目的とする。平成20年度は以下の研究計画をたて、実施した。 1)ホルマリン固定卵巣標本の透明化法の開発 ベンジルアルコールと安息香酸ベンジル液を組み合わせた透徹剤を開発し、ギムザ法およびズダン法を併用することにより、ホルマリン固定卵巣標本を透明化し、核の有無や位置を検便に判定できるようになった。 2)排卵後濾胞(POF)の簡易判別法の開発 Periodic acid&Shiff(PAS)染色は濾胞細胞層の基底膜と卵細胞の卵膜外層を選択的に赤紫色に染色することを見出し、従来用いられてきたHE染色と比較してPAS染色を用いることにより、POFの判別が容易になるとともに、退行卵(atresia)との識別が容易になった。 3)卵原細胞および卵母細胞の分裂周期に基づくマサバにおけるAEPMの適用の検討 増殖する細胞を特異的に標識する5-ブロモ・2'・デオキシウリジン(BrdU)をマサバ親魚に投与し、免疫組織化学的解析を行った。その結果、マサバの卵巣における生殖細胞の増殖は産卵期の前後を通して全ての時期に起こっていることが証明された。特に、産卵期間中に増殖する生殖細胞は卵黄形成初期の卵母細胞まで発達していたことから、マサバの総産卵数決定様式はdeterminantではなくindeterminantであることが明らかとなり、マサバの資源量推定においてAEPM(Annual Egg Production Method)は適用できないことが明らかとなった。
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