研究概要 |
本研究では,DEPM(Daily Egg Production Method)によるマサバの資源量推定法を確立することを目的とし,併せて,新たに開発された技術を,マイワシ等他の浮魚資源におけるDEPMの適用に際し汎用化することを目的とする。平成21年度は,母系遺伝するミトコンドリアを母子判定マーカーとして用い,マサバ雌親魚の各個体における産卵回数,産卵量を評価することを試みた。 満2歳の親魚(♀4尾,♂4尾)にGnRHa(400μg/kg)を投与し,3トン水槽に収容した。産卵はGnRHa投与の翌日から始まり,33日間にわたり25回観察された。このうち,前半の19日間における15回の産卵のうち,産卵数の多かった11回の産卵から得られた受精卵を対象にして,産卵日ごとに無作為抽出した30個の受精卵とメス親魚からDNAを抽出し,ミトコンドリアDNAのD-loop領域に含まれる700塩基を対象としたPCR-RFLP法による個体識別を行った。 11回の産卵中,♀1~♀4が産卵した回数はそれぞれ4,2,4,9回で,連日産卵する個体も認められた。また,産卵期間中の総受精卵数478,300個に対する♀1~♀4の寄与率はそれぞれ,13,6,21,60%であった。このように,マサバは連日産卵が可能であるが,同年齢,同サイズの親魚でも,再生産に関与する割合は個体により大きく異なることが明らかとなった。 また,マサバのGnRH分子種の同定を行い,GnRH産生細胞の脳内局在を解析することにより,本種の性成熟を制御するGnRHを明らかにすることを試みた。すなわち,HPLCおよび遺伝子クローニングにより,マサバのGnRH分子種を同定するとともに特異抗体を用いて脳内における各種GnRH産生細胞および神経軸索の分布を調べた。その結果マサバはsbGnRH,cIIGnRH,sGnRHの3種をもち,このうち,視索前野の細胞体の分布するsbGnRHが脳下垂体のGtH細胞に軸索を投射していることから,マサバではsbGnRHが性成熟を制御していることが示唆された。
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