研究概要 |
平成22年度はマサバの産卵特性や仔稚魚成長に及ぼす水温影響の評価,マサバ生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の上流制御因子であるキスペプチン(KiSS)などの発現動態解析を行った。 (1)2歳のマサバ親魚群(♂♀各3~6尾のペアー)に対してGnRHaを投与し,飽食条件において各群の産卵終了までの産卵量,卵径,油球径などを毎日モニタリングした。その結果,マサバの油球体積と卵黄体積の関係は産卵水温によって変化し,水温上昇に伴い油球体積および卵黄体積が小さくなった。また一般化線型モデル(GLM)の解析結果から,産卵水温が低いほど卵に占める油球の割合が高くなることが示された。 (2)GnRHa投与によりマサバ満2歳親魚群から得られた受精卵を17℃,20℃,23℃の一定水温区へ収容し,無給餌条件における卵~仔魚の生残率を調べるとともに,孵化仔魚の体サイズ,卵黄体積,摂餌開始までの成長率などを調べた。その結果,孵化時に卵黄量が多い個体ほど成長率が高く,一定の卵黄量であれば高水温の個体ほど成長が良くなることが示された。孵化後25日目の体サイズは水温によって異なり,20℃区と23℃区は17℃区に比べて体長で約6,9倍,体重で約65,213倍の差違が認められた。 (3)マサバKissの遺伝子クローニングを行った。次に,マサバのKiSS-1およびKiSS-2抗体を作製し神経分泌細胞の脳内局在を調べるとともに,生殖周期に伴う雌雄の脳内における2種KissのmRNA発現量を調べた。その結果,KiSS-1細胞は脳内に広く分布しているのに対し,KiSS-2細胞は視床下部にのみ存在することが明らかとなった。さらに,生殖周期に伴う雌の脳内における2種KissのmRNA発現量を調べた結果,KiSS-2発現量は成熟に伴い減少し,産卵期後に最も低くなったが,KiSS-1の発現量は生殖周期を通して一定であった。以上,マサバではKiss-2がBPG-axisの最上流で性成熟を制御していることが示唆された。
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