研究概要 |
脊椎動物において生殖の中枢を担うゴナドトロヒン放出ホルモン(GnRH)は魚類から哺乳類まで動物種を超えてよく保存されている.本研究では,水産無脊椎動物をモデルとして,GnRHの系統的かつ網羅的解析とともに,水産増養殖における安定的な種苗生産の基盤とするべく重要水産無脊椎動物の新規GnRHの同定と生理機能の解明を目指す. 1.水産無脊椎動物におけるGnRHの系統的かつ網羅的解析 二枚貝綱ヤマトシジミの脳神経節,足神経節および内臓神経節において,cGnRH-II免疫陽性反応が検出されたが,生殖腺には免疫陽性反応は検出されなかった. 2.重要水産無脊椎動物におけるGnRH分子種の同定 多板綱ヒザラガイの頭部からGnRHをアセトン抽出した.GnRH標準品をHPLCに付して溶出時間を確認した.次にサンフル抽出物をHPLCに付し,フラクション中のGnRH量を時間分解蛍光免疫測定法で測定した.そしてGnRH標準品の溶出時間と照合してGnRH分子種を推定した,その結果,ヒザラガイには,ヤツメウナギII型GnRH(lamprey GnRH-II》様ペプチドおよび未知のGnRH様ペプチドが存在することが示唆された.さらに,二枚貝綱ヤマトシジミの神経節には,lamprey GnRH-II様ペプチドが存在することも示唆された. 3.タコ型GnRH(octGnRH)時間分解蛍光免疫測定法の確立 タコ型GnRH(octGnRH)の機能を解明する基礎として,octGnRHの時間分解蛍光免疫測定法を確立した.マイクロプレートを第2抗体で固相化し,BSAでブロッキングした.これに抗octGnRH抗体,標準試料または未知試料,およびビオチン標識octGnRHを添加して競合反応させた,さらにユーロヒウム(Eu)標識ストレフトアビジンを添加し,最後に増強試薬を加えてEuを遊離させて蛍光強度を測定した.octGnRH濃度0.31ng/mlから40ng/mlの間で標準曲線が得られた,アッセイ内・アッセイ間変動係数および最小検出量はそれぞれ6.8%(n=10)および2.7%(n=5),4.9pg/mlであった.ヤリイカ,ケンサキイカおよびミズダコの脳抽出物の競合曲線は標準曲線と平行になった.以上より,本測定系が頭足類のoctGnRHの測定に有効であることが示唆された.
|