研究課題
1.フコキサンチン(FX)の脂肪組織における抗炎症作用これまでにFXが、白色脂肪組織における炎症性サイトカインの産生を抑制し、更に血糖値改善効果を示すことを見出している。その分子機構として、FXの代謝物が脂肪細胞とマクロファージのそれぞれに作用して炎症性サイトカインの産生を抑制するとともに、脂肪組織へのマクロファージの浸潤を抑制していることが明らかとなった。2.アスタキサンチン(AX)による大腸がん抑制効果前年度、AXの潰瘍性大腸炎および炎症を背景とした発癌モデルにおける抑制効果を報告した。本年度はその抑制能に関して詳細に解析したところ、AX投与群においてTNF-α、IL-1βに加えNF-κB発現量の有意な減少がみられた。よって、NF-κBの活性化を抑制することで炎症性サイトカインの遺伝子発現を抑制する分子機構が推察された。3.FXおよびマボヤカロテノイド抽出物による潰瘍性大腸炎及び大腸がん抑制効果(1)マウスに予め2週間FX含有飼料を与えた後DSSを1週間飲水投与し、潰瘍性大腸炎の発症への影響を調べた。その結果、FX群では大腸組織の炎症スコアーがコントロール群と比較して低い値であり予防効果が示された。更に、IL-6、IL-1βのmRNA発現量に低下傾向がみられたことから、FXの抗炎症作用を介した潰瘍性大腸炎に対する予防効果が示唆された。また、アロキサンチンなどを含むマボヤカロテノイド抽出物も、AXやFXと同様に潰瘍性大腸炎に対して予防効果を示すことを見出した。(2)マウスにAOMを腹腔内単回投与し、1週間の休薬後、DSSを1週間飲水投与することで炎症を背景とする大腸がんを誘発し、FXをDSS投与終了1週後より15週間混餌投与した。その結果、FX群において大腸の潰瘍の発生に低下がみられた。また、大腸腺がんの発生個数にも低下がみられた。更に、腫瘍組織部におけるPCNA(細胞増殖)の低下とアポトーシスの誘導がみられたことから、炎症後の大腸発がんに対するFXの予防効果が明らかとなった。
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