研究概要 |
本研究の目的は,魚体内に留置可能なバイオセンサを構築することにより,陸上からリアルタイムで健康診断が可能な測定システムを創出することである.昨年度は,魚類血糖値を測定するためのグルコースバイオセンサを製作し,魚を遊泳させた状態での血糖値のリアルタイム測定を可能にした.一方,血液中の総コレステロール濃度は,魚類の健康状態を示す有用な指標であることが知られている.そこで本年度は,昨年度の成果を基盤として,血中コレステロールのモニタリングが可能なバイオセンサの構築を目的に研究を遂行した.まず,ティラピアの魚体から,血液及び間質液を経時的に採取した後,両者に含まれる総コレステロール濃度を比色定量法にて測定した.その結果,血液及び間質液中に含まれる総コレステロール含量は52-480mg/dlの範囲で良い相関性(R=0.80756)が認められ,両者の間には経時的な変動があることが確認された.このことから,間質液を測定試料として血液中の総コレステロール濃度の測定が可能であることが示唆された.次に,魚体内へ挿入するバイオセンサ作製のために,作用極としてテフロン被膜白金イリジウム線を用い,被膜上に銀塩化銀ペーストを塗布し対極とした.この作用極上にコレステロールオキシダーゼとコレステロールエステラーゼを固定化し,バイオセンサを作製した.本センサの出力は,コレステロール濃度25-200mg/dlの範囲で良い直線性(R=0.9737)が得られた.さらに,本センサを眼球粘膜内部の間質液中に挿入し,小型ワイヤレスポテンシオスタットを接続して総コレステロールの測定を試みたところ,魚を遊泳させた状態でのリアルタイムモニタリングが可能であった.
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