研究概要 |
本研究の目的は,魚体内に留置可能なバイオセンサを構築することにより,陸上からリアルタイムの健康診断が可能な測定システムを創出することである.昨年度までは,淡水魚類を供試魚としてグルコース測定用及び総コレステロール測定用バイオセンサを各々開発し,それらのリアルタイムモニタリングを可能した.本年度は,1)海水魚類(ヒラメ)を対象にした血糖値測定の検討,2)両バイオセンサを用いた淡水魚類(ティラピア)のグルコース/総コレステロールの同時モニタリングの実現を試みた.まず,ヒラメの血糖値測定にあたり,血液及びEISF中のグルコース濃度との関係を調べたところ,血糖値が9~27mg dl^<-1>の範囲で両者の間に良好な相関関係が認められた(r=0.8895).次に無線ポテンシオシスタットを魚体に装着して,グルコースのリアルタイム測定を試みたところ,約16時間に渡って連続した測定が可能であった.一方,グルコース/総コレステロールの同時リアルタイムモニタリングを行うため,両バイオセンサをマルチタイプの無線ポテンシオスタットに接続し,ティラピアの左右眼球外膜に各々のセンサを留置した.測定の結果,時間経過に伴う両成分濃度の変動が確認でき,センサの出力電流値と従来法による測定値との間には類似した経時的変動が認められた.以上の結果より,本システムを用いることにより,魚を自由に遊泳させた状態で両成分の同時モニタリングが可能であることがわかった.以上本研究は,世界的にみても例のない魚類に特化した水中使用対応型ワイヤレスバイオセンサの構築を試みたものである.将来的には,センサが極めて微小なことから,何種類ものセンサを集積することが可能となり,グルコースや総コレステロールをはじめ,数種の指標を同時にモニタリングできるような多機能型健康診断システムが構築できると考えられる.
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