研究課題/領域番号 |
20380137
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
瀬口 昌洋 佐賀大学, 理事 (20093974)
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研究分担者 |
大串 浩一郎 佐賀大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (00185232)
速水 祐一 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (00335887)
郡山 益実 佐賀大学, 農学部, 助教 (30380794)
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キーワード | 有明海 / 底泥コア / 環境変遷 / 低次生態系モデル / 数値シミュレーション / 溶存酸素量 / 密度成層 / 貧酸素水塊 |
研究概要 |
過去2年間の研究成果を踏まえて、有明海奥部における環境変遷史シナリオの精度向上を図ると共に、近年の海洋環境悪化、特に二枚貝類などの激減に大きく影響している貧酸素水塊発生メカニズムの解明に取り組んだ。実施されていなかった低次生態系モデルによる1930年代と1950年代の数値シミュレーションを行い、各エポックを考慮して設定した1930年代、1950年代、1977年、1983年、1990年及び2001年(基準年)における潮汐、潮流、海水温、塩分、SS、透明度、クロロフィルa、溶存酸素量(DO)、無機態窒素、リン酸態リンなどの時空間的分布を推算した。これらのデータを基に、有明海の海域特性により区分した12海域における夏季、冬季及び年平均の炭素、窒素、リン、DOなどの物質存在量(ストック)と各海域間の物質輸送量(フラックス)を算出した。これらのストックとフラックスの結果に基づいて、1930年代から近年に至る有明海奥部における環境変遷の経緯を定量的に辿った。特に貧酸素水塊発生などの環境悪化や有明海特産のアゲマキ、タイラギなどの死滅が深刻化している奥部西岸域において、貧酸素水塊発生の経緯やメカニズムを明らかした。すなわち、この海域においては、1930年代や1950年代において顕著な貧酸素水塊発生は見られなかったが、内部生産による総有機態窒素(TOC)の急増した1970年代後半から近年にかけて貧酸素水塊発生が激化した。また、水深3m~15mの層でのDO消費量も貧酸素水塊発生の激化に呼応するように1970年代後半から急増した。これらの点より、近年の奥部西岸域における夏季の貧酸素水塊発生の激化には、底層でのTOCの好気的分解によるDO消費量の増大と潮流速の低下による密度成層の強化に伴う表層から下層へのDO供給量の減少が大きく起因していると推察された。また、有明海の潮流特性を利用して人工湧昇流を発生させ、底層と表層の海水交流を促進することが貧酸素水塊発生防止策の1つとして有効であることを実験的に検証した。
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