研究課題/領域番号 |
20380139
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
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研究分担者 |
牧野 義雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70376565)
川越 義則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80234053)
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キーワード | 疎水性水和 / 凍結 / 氷結晶 / 農産物 / 長期保存 |
研究概要 |
超純水とオオムギ子葉鞘組織片を用いて、水中におけるキセノン水和物の結晶サイズ分布とオオムギ子葉鞘細胞の生存率について検討した。まず、水中のキセノン水和物について、その形成の初期過程に2つのパターンが観察された。多くの場合、水和物結晶が2次元的に拡大する現象が観察されたが、条件によっては各所に離散的に水和物の結晶核が出現し、これらが水表面で接合していく現象も認められた。結晶サイズについては、透過光顕微画像において結晶が形づくる2次元面積を求め、算出した等価円直径を5μm間隔で分類して、サイズ分布とした。その結果、圧力を1.0MPaに固定した場合、5℃よりも1℃の場合に結晶サイズ分布はより小さい方にシフトした。一方、温度を1℃に固定した場合、0.7~1.0MPaの圧力範囲で水和物結晶形成後1時間における最頻値は1.0MPaの場合に最も小さく、5~10μmになった。したがって、温度が低くキセノンガスの圧力が高いほど、微細な結晶核が均質に形成されると推察された。さらに、保存時間の経過に伴い、結晶サイズの最頻値が小さな値から大きな値にシフトすることから、時間と共にキセノン水和物が成長する傾向が示された。 次に、オオムギ子葉鞘細胞では、活発な原形質流動が観測された細胞を1℃で1.0MPaのキセノンガス雰囲気下に置くと十数分後に原形質流動が停止し、その直後に視野が暗化した。視野の暗化は、細胞内に微細な水和物結晶が形成されたことによる。これは、毎秒150枚で撮影した顕微画像に基づいた判断である。そこで、水和物の形成開始からの経過時間と-20℃で氷結晶形成後の経過時間を同一にして子葉鞘細胞の生存率を比較した。その結果、氷結晶形成から1h後に細胞の生存率が30%~40%まで低下するのに対し、キセノン水和物を形成させた細胞では99%、9h後でも約40%の生存率が示された。
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