農業と農村の振興および食の安全と環境保全の観点から、地域の気象資源と植物の生理的機能に立脚して持続可能な高収益生産を可能にすることを目指す。そのために、多様な気象資源を利活用できる生産技術として、省エネルギー温度管理、根域の短期間低温ストレス処理、チャの遮光・降温処理、斜面日射有効利用システム、地中水パイプ蓄放熱システムを提示するとともに、それらの効果を生理的・工学的に検証することを目的としている。最終年の22年度は、初年度に構築したシステムの改善や新たに構築したシミュレーションモデルなどにより下記の成果を得た。 1.地温不易層に埋設した地中水パイプ蓄放熱システムを用いた水耕栽培の養液の省エネルギー温度管理を実証するとともに、シミュレーションモデルを構築して、標準規模(2a)の水耕ベッドにおける異常高温の回避のための地中水パイプ蓄放熱システムと養液タンクの適正規模を算出した。 2.地中水パイプ蓄放熱システムを応用したスイカの局所冷風処理によって、スイカ果実の口中の過剰な温度上昇が緩和され(最高で8℃低下)、果実外縁部の果糖とショ糖の含量が増加した。さらに、バラハウスにおいて夏季の夜温管理へのヒートポンプの応用による生理的効果を調査するとともに、花卉の最高品質「秀」の割合が増加することを実証した。 3.根域温度ストレス処理システムにおいて、葉菜の高品質化を目指して低温処理期間および高温前処理期間のさらなる最適化を試み、低温ストレス処理における設定低温の高温化、高温前処理期間の短縮化などを可能にした。 4.チャにおいて、夏期の遮光処理用の被服資材を、秋期から冬期にかけての被服処理に応用することによって、茶葉における光阻害による光合成能の低下および低温障害(赤枯れ)を防止できることを明らかにした。 5.斜面日射をハウスの夜間暖房に有効利用するシステムにおいて、斜面蓄熱槽内に常温で相変化する潜熱蓄熱材を新たに導入することによって、蓄放熱効果を改善でき、昼間の過剰な日射エネルギーを夜間の保温に有効に活用できる可能性を示唆した。
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