平成21年度は草資源で良質かつ安全な牛肉を生産するシステム構築のためのウシの体質形成プログラとその後の粗飼料による肥育時の検討を行った。給与飼料についてまず、初期成長期を代用乳(インプリンティングに使用するミルクは全酪連への特注によるタンパク質と脂肪分、エネルギーをそれぞれ強化したミルクを使用予定)し濃厚飼料を用いた穀類多給区と代用乳(通常市販ミルク)と粗飼料を用いた粗飼料多給区の2群に分け、10カ月齢以降は、乾草飽食と放牧肥育の組み合わせによる粗飼料で肥育した。これらの飼養環境における初期成長期の栄養の影響を解析した。ニードルバイオプシーおよびショットバイオプシーにより微量筋サンプルをロース芯(胸最長筋)より採取し、体質制御における肉質関連の候補遺伝子群の発現を調査し、特に10カ月齢時には、脂肪形成因子群で初期成長期の栄養処理の影響が出ることが明らかとなった。しかし、粗飼料肥育期に入るとそれら遺伝子群の発現は減少することがあきらとなった。また、和牛の体質制御におけるDNAチップを用いたゲノムワイドな遺伝子の網羅的発現解析による代謝インプリンティング機構関連因子の探索も行い、いくつの代謝に影響を与えるpathwayが見つかっている。これらを全ポイントで行う予定で、随時データがでているが、情報量が膨大で、解析には時間が要している。また、DNAメチル化の網羅的解析について、チップを一部のサンプルを用いて行った。これらの解析によって初期成長期の和牛の代謝インプリンティングによる体質制御機構に関連した遺伝子のプロファイル、単離、それらの相互作用、発現動態が明らかになりつつある。
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