研究概要 |
前年度褐毛和種を用いて明らかにしたオキシトシン受容体遺伝子プロモーター領域の1,2,および3本のDNAバンド多型のホルスタイン種20頭におけるアレル頻度はそれぞれ14.3%,76.2%,9.5%と、褐毛和種65頭におけるアレル頻度65.4%,30.8%,3.8%とは大きく異なるものであった。1(3頭)および3(2頭)の頻度が低かったためストレス感受性および社会行動特性との関連について統計的な解析は困難であった。 CD38遺伝子エキソン2の前後のイントロンに(前18塩基Cor Tおよび後108塩基の位置G or T)にSNPを発見した。アレル頻度はそれぞれC73.7% or T26.3%、G89.5% or T10.5%、前後の組み合わせでCG68.4%,TG21.1%,CT5.3%,or TT5.3%であった。統計解析可能なC or TおよびCG or TG間で初生時のオキシトシン基礎濃度、ストレス感受性、社会行動特性および生産関連形質を比較したところ、初生時のオキシトシン基礎濃度に差は認められなかった。しかし、60日齢での新奇環境に対する行動反応特性「社会的隔離の解消欲求に伴う活動性の増加傾向」はT型およびTG型において有意に大きかった(p<0.05)。社会行動特性では10ヶ月齢での群編入後1ヶ月目の社会行動特性「積極傾向(非受容)」がT型およびTG型において大きい傾向が認められた(p<0.1)。さらに、生産形質のうち初産時305日乳量がT型およびTG型において多い傾向が認められた(p<0.1)。 以上のことから、オキシトシンの分泌制御に関与すると考えられる表面抗原CD38遺伝子の第2エキソン前後のSNPsは初生時の血漿中オキシトシン濃度との関連はないものの、成長後のストレス感受性、社会行動特性、泌乳量などに影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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