研究課題
プラスチック製品の可塑剤として広く使用され、環境への溶出が懸念されているdi(n-butyl) phthalate(DBP)及びdi-iso-butylphthalate(DiBP)の精巣毒性作用機序を検討した。1)まず、DBPのエストロゲン活性を明らかにするため、抗エストロゲン作用を有するICI 182,780(ICI)を用いて、DBPないしestradiol-3-benzoate(EB)投与により誘起された精細胞アポトーシスの抑制試験を行った。抑制試験においては、ラットにICIを前投与し、その後にDBPないしEBの投与を行った。DBPないしEB単独投与群においては、いずれも有意なアポトーシス精細胞数の増大が認められたが、ICI前投与群(ICI+DBP,ICI+EB)ではアポトーシス精細胞数の有意な減少が確認された。一方、すべての実験群において、精巣内テストステロンおよびFSHレベルは有意に減少していた。これらの結果を考え合わせると、DBPはエストロゲン様作用を示し、DBP投与により誘起される精細胞アポトーシスは精巣におけるエストロゲン受容体の活性化によりもたらされると考えられた。2)次に、DiBPによる精細胞のアポトーシスは、エストロゲン様作用によるものか否かを解明するため、ラットにDiBPないしEB経口曝露を行う前に、ICIを皮下投与し、その後精巣の組織学的検討を行った。その結果、精細胞のアポトーシスの減少がEB群で見られたものの、DiBP群では認められなかった。このことから、DiBPによるアポトーシスはエストロゲンのそれと異なる作用経路によることが示唆された。
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