研究課題
本研究では、マウスの卵子と胚を同じ方法でガラス化凍結保存できる、万能凍結保存法の開発を目指す。本年度は、細胞膜透過性が低く耐凍性も低い卵子と、細胞膜透過性が比較的低い4細胞期胚における内在性の水・耐凍剤チャンネルの発現を誘導する方法を開発し、さらに誘導可能な水・耐凍剤チャンネルの透過特性を明らかにすることを目指した。卵核胞期卵子を、デキサメサゾン(DEX)を添加した培養液中で成熟させても、水・耐凍剤透過性は向上せず、水・耐凍剤チャンネルは誘導されなかった。比較的高濃度のレチノイン酸(RA)を添加した培養液で培養した場合は、MII期にまで成熟しなかったが、水透過性とアセトアミド(AA)透過性が約1.5倍向上し、水・耐凍剤チャンネルが誘導されたと考えられた。ソルビトールを添加した高張な培養液(高張液)で培養した場合も、卵子はMII期にまで成熟しなかったが、AA透過性が約4倍に増加した。卵子における水・耐凍剤チャンネルであるアクアポリン(AQP)のmRNAの発現をRT-PCRで調べた。その結果、AQP3とAQP7の他にAQP9の発現が認められた。一方、マウス1細胞期胚をDEXあるいはRAを添加した培養液や高張液中で4細胞期胚にまで発育させたが、水・耐凍剤透過性は向上せず、水・耐凍剤チャンネルの発現は誘導されなかった。次に、マウスのAQP3とAQP9のcRNAを卵核胞期の卵子に注入してこれらのAQPをMII期で発現させて、その透過特性を調べた。AQP3は水、グリセロール、エチレングリコールを効率よく透過したが、AA、DMSO、プロピレングリコールはほとんど透過しなかった。一方、AQP9は、水はほとんど透過しなかったが、いずれの耐凍剤も効率よく透過した。したがって、マウス卵子ではRAと高張液によって、AQP3とAQP9のいずれもが誘導されたと考えられる。
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