始原生殖細胞を利用した遺伝子組換えニワトリ作出技術の開発を目指して、本年度は始原生殖細胞の培養法の検討、レシピエント胚からの内在性始原生殖細胞の除去法の検討、さらに培養始原生殖細胞への遺伝子導入を試みた。ニワトリ初期胚より始原生殖細胞を採取し、ニワトリ初期胚由来線維芽細胞およびマウス初期胚由来線維芽細胞をフィーダー細胞として培養を行った。いずれのフィーダー細胞を用いても始原生殖細胞はフィーダー細胞に接着して増殖し、コロニーを形成した。培養した始原生殖細胞をレシピエント胚へ移植した結果、一部の細胞で生殖隆起への移住が認められたが、移住能を失ったものも多く見られた。また一方で、レシピエント胚からの内在性始原生殖細胞除去のため、生殖細胞の増殖を阻害する薬剤である「ブスルファン」を放卵直後の受精卵に投与した後、始原生殖細胞の移植を行ってキメラニワトリを作出したところ、作出したキメラニワトリからの移植した始原生殖細胞由来の後代の得られる割合の向上が認められた。中には、移植した始原生殖細胞由来の後代のみを産出するキメラニワトリが作出できた。ただし、まだキメラ個体間のバラツキが大きいので、投与量等についてさらに検討する必要がある。培養始原生殖細胞へのGFP遺伝子の導入は、エレクトロポーレーション法の一種であるNucleofection法により行った。培養5日目の始原生殖細胞にGFP遺伝子導入を試みた結果、50%以上の効率で導入することができた。GFP遺伝子が導入された始原生殖細胞は、培養下での増殖性を維持していた。以上の結果より、始原生殖細胞のインビトロでの培養は可能であるが、未分化状態の維持が不十分であり、さらに培養条件の検討が必要であると考えられた。また、受精卵へのブスルファン投与は、生殖系列キメラニワトリにおける生殖細胞の置き換え率を向上させるのに有効であることが示された。
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