研究課題/領域番号 |
20380156
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
内藤 充 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (70355733)
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キーワード | 始原生殖細胞 / 外来遺伝子 / トランスフェクション / GFP遺伝子 / ニワトリ初期胚 / 生殖系列キメラ / 品種識別 / 体外培養 |
研究概要 |
始原生殖細胞を利用した遺伝子組換えニワトリ作出技術の開発を目指して、本年度は始原生殖細胞の培養法およびレシピエント胚からの内在性始原生殖細胞の除去法について引き続き検討した。ニワトリ初期胚より採取した始原生殖細胞を、ニワトリ初期胚由来線維芽細胞をフィーダー細胞として培養を行った。培養した始原生殖細胞は、フィーダー細胞に緩やかに接着して増殖し、コロニーを形成した。このコロニーを回収し細胞を分散させたところ、ほとんどの細胞が始原生殖細胞の形態的特徴を有していた。これら始原生殖細胞が生殖巣への移住能を有しているか否かを検討するため、蛍光色素をラベルした後レシピエント胚へ移植した。その結果、蛍光ラベルされた培養始原生殖細胞はレシピエント胚生殖巣に移住、定着したことが確認された。このことはPCR法によっても確認することができた。そこで、さらに培養始原生殖細胞がレシピエント胚生殖巣において正常な配偶子(精子、卵子)へ分化できるかどうか確認するため、30日以上培養した始原生殖細胞をレシピエント胚へ移植し、処理胚を艀化させた。艀化した雛は現在育成中である。一方、レシピエント胚より内在性始原生殖細胞を除去するため、生殖細胞の増殖を阻害する薬剤である「ブスルファン」を放卵直後の受精卵に投与した。この際、ブスルファンの濃度、投与量について検討を加えた。その後、処理胚を2.5日間艀卵した後、ドナー始原生殖細胞の移植を行い、生殖系列キメラ個体の作出を行った。キメラ個体は成熟後交配実験を行い、ドナー始原生殖細胞由来の後代が得られる割合を調べた。その結果、概ね50%以上の生殖細胞の置き換えが可能になり、実用的に利用できるレベルに達したことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリ生殖系列の操作にとって必要な始原生殖細胞培養法の開発、改良が進み、生殖巣への移住能を有した状態での大量培養が可能になった。これら培養始原生殖細胞が正常な配偶子への分化能を有していることが確認できれば、ニワトリ生殖系列への外来遺伝子導入が可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
改良した培養法によって増殖した始原生殖細胞が生殖巣への移住能を有していることが確認されたことから、次年度はこれら培養始原生殖細胞の正常な配偶子への分化能について調べる。正常な配偶子への分化能が確認されれば、培養始原生殖細胞へGFP遺伝子を導入するとともに、GFP遺伝子が導入された培養始原生殖細胞のレシピエント胚生殖巣への導入を試みる。
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