研究課題/領域番号 |
20380160
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
服部 雅一 北里大学, 理学部, 教授 (40211479)
|
研究分担者 |
大橋 和彦 北海道大学, 獣医学研究科, 教授 (90250498)
杉本 千尋 北海道大学, 人獣共通感染症センター, 教授 (90231373)
|
キーワード | 白血病 / PD-1 / C / EBPα / SATB1 / アナジー |
研究概要 |
白血病発症時に観察される宿主個体におけるT細胞機能不全の分子メカニズムを明らかにするために、白血病発症マウスの末梢から抗原不応答状態(アナジー)に陥ったPD-1^+CD4^+T細胞を単離し正常な抗原応答性を示すPD-1-CD4^+T細胞との間でDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、両者の間に大きな遺伝子発現パターンの差が認められた。PD-1^+CD4^+T細胞において発現増強が見られた特徴的な遺伝子としては、C/EBPαがあげられる。この遺伝子は骨髄系細胞の分化を制御することが知られている転写因子であり、通常、T細胞では発現が見られない。また、この遺伝子の強制発現により細胞増殖が止まることが知られている。C/EBPαを、レトロウイルス発現ベクターを用いて末梢T細胞に導入したところ、細胞周期が停止するとともに、PD-1^+CD4^+T細胞で発現増強が認められたオステオポンチン遺伝子の発現上昇、ならびにIL-2遺伝子の発現低下が起こることが明らかになった。この結果は、PD-1^+CD4^+T細胞で見られる多くの現象は、C/EBPαの発現増強によるものであることを示唆している。一方、PD-1^+CD4^+T細胞において通常、T細胞で発現しているSATB1の発現低下が認められた。SATB1はゲノムDNAのAT-rich領域に結合する蛋白として同定された分子であり、この結合を介しゲノム構造を変化させることにより、数百に及ぶ遺伝子の発現を調節するゲノムオーガナイザーとして機能していることが知られている。先の末梢T細胞におけるC/EBPαの強制発現実験では、SATB1遺伝子の発現変化が認められなかったことから、SATB1遺伝子の発現低下がC/EBPα発現上昇を含むPD-1^+CD4^+T細胞の様様な遺伝子変化の原因である可能性が示唆された。
|