研究概要 |
加齢や白血病の発症に伴いマウスの末梢において抗原不応答性に陥ったPD-1^+メモリー型ヘルパーT細胞が蓄積する分子メカニズムを解明するために行ったDNAマイクロアレイ解析から,骨髄系細胞の分化に関わる転写因子C/EBPαの発現上昇とゲノムオーガナイザーとして最近,その機能が注目されているSATB1の発現低下が起こっていることが明らかとなった。そこで,本年度はこれらの遺伝子産物と抗原不応答性の誘導の関係を調べるために,これら遺伝子を末梢ヘルパーT細胞において強制的に発現するトランスジェニックマウス(E4POK-C/EBPαTgマウス,E4POK-SATB1Tgマウス)の作製を試みた。E4POK-SATB1Tgマウスについては,導入した遺伝子が陽性だった個体(11/22匹)について,F1を作製し,導入遺伝子がgerm lineに乗っているかどうか検討中である。E4POK-C/EBPαTgマウスについては,現在,受精卵へのインジェクションを行っている。 こうした遺伝子改変マウスの作製とは別に,SATB1の末梢T細胞における役割を明らかにするために,CD4T細胞ハイブリドーマである3A9細胞にSATB1を強制的に発現させ,解析を行った。その結果OSATB1が強制的に発現することにより,T細胞抗原レセプターからのシグナルに対する細胞増殖性には影響がなかったが,T細胞の増殖,活性化に大きな影響を持つサイトカインの1つであるIL-2産生は,コントロールベクターを導入した細胞に比べ,明らかに増強されることが明らかになった。一方,これまでSATB1によりその発現が制御されていると報告にあったTh2型サイトカインであるIL-4の産生については影響が見られなかった。この結果から,PD-1^+メモリー型ヘルパーT細胞の抗原不応答状態の誘導には,IL-2産生低下が関与している可能性が示唆された。
|