研究概要 |
本研究は、マウスをモデルとして胚着床の全貌を明らかするものである。これまでの我々の研究で得られた胚着床を制御する遺伝子発現プロファイルと、それを制御すると予測されるマイクロRNA(Steg PS, Nature,2007;Choi WY, Science,2007)プロファイルとの関連性、プロテオームとの関連性を明らかにし、さらに個々の遺伝子、マイクロRNAおよびタンパク質の機能解析を行うことにより、哺乳類胚の着床の本質を明らかにする。また最終的には、本研究で明らかになった分子ネットワークを基礎として、in vivoで胚着床のコントロール試験を行う。本年度は、着床に必須のホルモンである白血病阻止因子(LIF)と、それを制御するエストロジェンの、プロジェステロン受容体に対する発現制御機構の解析を行った。結果、プロジェステロン受容体はLIFやエストロジェンによって発現制御されるというよりも、むしろプロジェステロン自身により制御されていることが明らかとなった。次に、マウス胚の着床制御試験を行った。着床期に特異的に上昇が確認される因子に対する抗体を作製し、ある化合物で修飾したものをマウス胚の着床期に腹腔内投与したところ、明らかな着床阻害が確認された。この物質が着床に必須であることを示した報告はなく、世界初の結果である。また、抗体による着床阻害試験も確立されたものはなく、これも世界初の方法である。以上は、着床を妊娠の進行という時間軸で見たときの、着床機構の解析であり、その方法の開発である。最後に、マウス胚のスペーシング機構の解析を行うためのマウスモデルの作製を行った。このモデルマウスの作製の過程で、胚のスペーシングの-要素である間膜-反間膜軸の決定は、妊娠2日目に母体側の因子のみによって行われることが明らかとなった。
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