ウマ脳血管内皮細胞よりクローニングしたEHV-1レセプター(以下EHVRと略す)の機能を解析する目的で、平成20年度は以下の実験を行った。 ウマ皮膚線維芽細胞由来細胞株E.DermよりRT-PCR法を用いてEHVRのホモログ分子を2種類クローニングし、レセプターとして機能しないホモログの細胞外ドメインと、EHVRの細胞外ドメインとの置換変異体を作製した。これらをEHV-1非感受性細胞NIH3T3で一過性に発現させ、EHV-1に対する感受性を比較検討したところ、EHVRに存在する3個の細胞外ドメインのうち、アミノ末端より2番目のドメインがレセプター機能に重要な役割を果たすことが明らかになった。 アルファヘルペスウイルスではエンベロープ蛋白gDが細胞への吸着・侵入に関与すると考えられている。EHV-1のgD遺伝子をクローニングし、昆虫細胞発現系を用いて膜貫通領域を欠いた分泌型可溶性蛋白を作製した。EHVRを安定発現させたNIH3T3細胞を調製し、可溶性組換えgDで細胞を前処理した後にウイルスを感染させたところ、感染阻害効果は認められず、gD以外のエンベロープ蛋白がEHVRのリガンドとなる可能性が示唆された。 in vivoにおける病原性への関与を検討する目的で、ウマ体内におけるEHVR遺伝子発現組織の検索を行った。Northern hybridizationでは、検索したすべての臓器においてEHVRのシグナルが検出された。脳、肺をin situ hybridizationにより解析した結果、脳血管内皮細胞と細気管支上皮細胞にEHVRのシグナルが検出された。現在、EHVR遺伝子導入マウスの作製に適したプロモーター、エンハンサーの検討を行っている。
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