ウマ脳血管内皮細胞よりクローニグしたEHV-1レセプター(以下EHVRと略す)の機能を解析する目的で、平成21年度は以下の実験を行った。 EHVRを安定発現させたNIH3T3細胞(3T3-EHVR細胞)とEHV-1感受性細胞株であるCHO細胞、RK13細胞におけるウイルス侵入様式を比較解析した。EHV-1のCHO細胞への侵入はエンドサイトーシスを介するのに対し、RK13細胞への侵入は細胞膜とウイルスエンペロープ膜の直接融合によることが過去に報告されている。これら細胞のエンドサイトーシスをATP枯渇により阻害し、EHV-1の細胞内侵入に及ぼす影響を調べた。その結果、3T3-EHVR細胞におけるウイルス侵入量はCHO細胞と同様に減少し、一方で、RK13細胞においてウイルス侵入の阻害は認められなかった。従って、EHV-1はエンドサイトーシス経路を利用して3T3-EHVR細胞に侵入することが明らかとなった。 HSV非許容細胞であるCHO-K1細胞にEHVRを一過性発現させ、ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)を感染させたが、HSVに対する感受性は認められなかった。従って、EHVRはHSVに対してはレセプターとして機能しないと考えられた。 Northern hybridizationによる検索で、EHVRはウマ体内においてほとんど全ての臓器に発現することが明らかとなっている。より自然宿主に近い病態を再現するマウスモデルを作成するため、導入遺伝子をubiquitousに発現させるプロモーターを使用してEHVR遺伝子導入マウスを作製し、系統の樹立を現在行っている。 以上に加え、EHV-1が細胞内侵入の際に利用するエンドサイトーシス経路は細胞株によって異なることを明らかにし、報告した。
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