ウマ脳血管内皮細胞よりクローニングしたウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)レセプター(ウマMHCクラスI分子A68)の機能を解析する目的で、平成23年度は以下の実験を行った。 4~8週齢のA68遺伝子導入マウスに様々なウイルス力価でEHV-1を経鼻感染、腹腔内感染させたが、脳脊髄炎を惹起できなかった。自然宿主である馬において、EHV-1は末梢血単核球(PBMC)に感染し、感染PBMCによる細胞随伴性ウイルス血症が、ウイルスの体内播種に重要な役割を果たす。導入遺伝子のN末端側に付加したFLAGタグを認識する抗体を使用し、A68遺伝子導入マウスのPBMCをFACS解析したところ、A68分子の細胞表面発現が認められなかった。従って、本研究で作製されたA68遺伝子導入マウスのPBMCはウイルス感受性を有さず、これに起因する細胞随伴性ウイルス血症の欠如が、中枢神経系の血管内皮細胞へのウイルス伝播を妨げていると考えられた。 ウマMHCクラスI分子のN末端から173番目のアミノ酸がEHV-1gDとの結合ならびにレセプター機能に重要な役割を果たし、同部位にアラニン等の疎水性アミノ酸を有するサブセットがレセプターとして機能することが明らかとなり、報告した。 A68の細胞外領域とヒトIgGlFc領域との可溶性融合蛋白(A68-Ig)ならびにA68のα2ドメインとヒトIgG1Fc領域との可溶性融合蛋白(A68α2-Ig)を作製した。また、N末端から173番目の残基を中心とした25アミノ酸のMHCクラスIペプチドを調整した。E.Derm(ウマ細胞株)、3T3-A68(A68を安定性に発現するNIH3T3細胞)をこれら可溶性融合蛋白、ペプチドで前処理し、EHV-1を感染させたが、いずれにおいても感染阻害効果は認められなかった。
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