(1)胎児期TCDD曝露マウスの変異原物質投与実験:胎児期ダイオキシン曝露された動物が生後に易発ガン性になることを確認するため、初期計画に基づき近交系マウスC57BL/6JにTCDDを投与、産仔の雌個体にBaP(1 mg/body)を8回(2回/週、計4週)投与した。腫瘍形成促進法としての亜鉛欠乏食給餌は、BaP投与終了18日後のPND102から43日間とした。PND200で病理解剖を実施したところ、BaPを投与した個体すべてにおいて前胃に腫瘍の形成が認められた。腫瘍の数を前胃あたりでカウントしたところ、予想通り胎児期TCDD処理した群のほうが形成率が高いことがわかった。 (2)CYPIA1ゲノムのエピジェネティック修飾に関する解析:発見した低メチル化領域がCYPIA1の誘導性上昇に関与しているか、メチル化シトシン合成DNAを使用した合成レポーターコンストラクトを細胞株に導入することにより直接的証明を試みた。マウスヘパトーマHepalclc7にメチル化CpGを持ったレポーターコンストラクトの導入を行い、非メチル化レポーターとの比較実験を実施した。コンストラクト作成には、シトシンメチル化合成オリゴDNAによるレポーターベクター全長PCR法を独自開発した。これらを遺伝子導入後、TCDD曝露を行ったところ十分なLuciferase誘導が確認できたが、メチル化による差異は認められなかった。しかし、この遺伝子導入細胞をG418処理し安定細胞集団を得た後、再びTCDD曝露実験を実施したところ、非メチル型の誘導に比べてメチル型の誘導率が低下することが確認でき、また、そのゲノムDNAでは導入した遺伝子のメチル化が維持されていることが確認できた。これらの結果は、今回我々が初めて明らかにしたTCDDの胎児期曝露による低メチル化ホットスポットが、そのメチル化により遺伝子の転写を抑制することを明らかにしたと言える。
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