本研究では初年度に犬に毛包幹細胞がヒトやマウスと同じく毛包膨大部付近に存在し、同様のマーカーを発現する増殖の遅い、培養で大型のコロニーを形成することを証明した。2年目の今年度は、新たな幹細胞マーカーであるCD200の犬毛包での発現を観察し、同時にマウスを用いた幹細胞からの毛包再構築を試みた。幹細胞マーカーのCD200は、犬でも毛包膨大部に強く発現することを見出し、また、これらは蛍光色素ならびにセルソーターと組み合わせることにより、より効率的に毛包幹細胞を分離することが可能となった。次に犬の毛包からマイクロダイセクションにより毛包膨大部を採取し、CD200、ケラチン15、DIO2、さらにSOX9、LHX2などの幹細胞マーカーが発現していることにより毛包幹細胞であることを確認する。そののちに、幹細胞と毛母細胞を試験管内で共培養したものをマウスの皮膚に移植した。マウスの皮膚は予め全層にわたる皮膚を除去した。この実験系で表皮と同様にマウスの皮膚にも幹細胞由来の毛包が再構築された。さらに、これが犬由来であることを犬に特異的なDNAシークエンスを検索することにより確認した。最終年度ではこの毛包幹細胞を用いた皮膚の三次元モデルを構築し、創傷治癒に対する効果を検討中であり、さらに実践的な成果が期待できると考えている。
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