1. 柴犬のGM1ガングリオシドーシスの予防計画の実践 本疾患の予防を目的として、(社)日本犬保存会の鹿児島支部と連携協力し、鹿児島県内の主要な柴犬ブリーダーが所有する繁殖犬のDNA(唾液)収集に着手した。 2. 日本猫の各種ライソゾーム病の遺伝子診断法の開発と分子疫学調査 GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス0亜型およびニーマンピック病の主要変異に関わる遺伝子型を判定するリアルタイムPCR法を開発した。これらの方法を用いて、日本(九州および四国)、韓国、バングラデシュ、リビアの雑種猫(2千頭以上)について検査した。その結果、GM1ガングリオシドーシスにおいては、国内外で比較的高いキャリア頻度(0.5%以上)であることが判明した。一方、その他の疾患では、現在までにキャリアが認められないため、キャリア頻度は0.1%以下であると推測された。 3. ボーダーコリーの各種遺伝病の新規診断法開発と予防制圧 神経セロイドリポフスチン症(NCL)については、ボランティア組織であるJBCHNとの協力による遺伝子型調査により、キャリア頻度は減少傾向を示し(7.3%)、2009年以降の発症犬が確認されなくなった。さらに、コリー眼異常、MDR1遺伝子変異(イベルメクチン中毒)についても迅速遺伝子型検査を開発し、ボーダーコリー集団における遺伝子頻度を明らかにした。 4. 新規同定疾患の分子基盤解明 トイプードルのサンドホフ病について、原因遺伝子候補と考えられる変異を発見した。また、日本猫のNCLについても候補遺伝子のエクソン配列の中に、数種の変異候補を同定した。 5. 新規疾患の同定 熊本で既知の変異を有しない日本猫のGM1ガングリオシドーシスが同定された。また、トイプードルにライソゾーム病の一種と推定される成犬型発症の疾患が同定された。さらに、チワワおよびサルーキに新たなNCLが同定された。
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