陸圏における生物個体の表層は外界(空気)に接することから、ポリエステル・多糖・タンパク質・脂質などの複合固体マテリアルで疎水化しており、複数の酵素反応によりそれらの高分子複合マテリアルは分解されると考えられている。一方、我々は、糸状菌・担子菌に界面活性タンパク質hydrophobnが広範に分布し、それら界面活性タンパク質が、固相表面に吸着後、高分子分解酵素を固相表面にリクルートして分解を促進する新奇機構ことを明らかにしてきた。本研究では、これ迄に解析されてこなかった界面活性タンパク質群の天然における固体分解への寄与を理解するために、複数の天然固体高分子基質を調製して、麹菌を固体上に生育させて、生産される界面活性タンパク質群と固体分解酵素を、転写およびタンパク質のレベルで網羅的に解析する。本年度は、セルロースとしてアビセルを、硬タンパク質の代表として羽毛ケラチンからの精製ケラチンを固体基質として、麹菌を生育させて、菌体よりのmRNAの抽出およびび固体基質に吸着したタンパク質の抽出法の開発を行った。セルロースについては、mRNAの抽出も可能であり、セルロース固体表面からSDS抽出によるタンパク質回収に成功した。セルロース表面からの回収タンパク質にはセルラーゼ類の他に、機能未知の分子量2万以下の候補タンパク質が複数見出された。現在、高精度MASS解析を開始した。また、ケラチンについては、麹菌の培養とmRNAの抽出を行って解析中である。さらにhydrophobin Ro1Aとポリエステラーゼの相互作用については、両タンパク質上の相互作用に関係するアミノ酸残基の詳細解析が進んだ。
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