研究概要 |
陸圏の生物個体の表層は外界(空気)に接することから、ポリエステル・多糖・タンパク質・脂質などの複合固体素材で疎水化しており、それらの高分子複合素材は複数の酵素反応により分解される。一方、我々は、糸状菌・担子菌に界面活性蛋白質hydrophobinが広範に分布し、それら界面活性蛋白質が、固相表面に吸着後、高分子分解酵素を固相表面にリクルートして分解を促進する新奇機構を明らかにしてきた。本研究では、界面活性タンパク質群の天然における固体分解への寄与を理解するために、複数の天然固体高分子基質にi麹菌を生育させて、生産される界面活性蛋白質群と固体分解酵素を転写及び蛋白質のレベルで網羅的に解析する。 本年度は前年度に引き続き、セルロースとしてアビセル、硬蛋白質として精製ケラチン、多糖として糸状菌β-1,3-グルカンとα-1,3-グルカンを固体基質として、麹菌を生育させて転写解析と吸着蛋白質の抽出解析を行った。その結果、セルロースについては機能未知の分子量2万以下の結合蛋白質2種(0334と0357)を見出し、それらを麹菌で発現して精製を行った。それら2種については、リクルート酵素として多糖結合ドメインを持たないXylanaseF3(XynF3)が候補となることが示唆され、精製蛋白質を用いた相互作用解析を行った結果、固体表面に結合した0334と0357はXynF3とが弱い相互作用することが明らかになった。一方、ケラチン及び糸状菌グルカン類については、これまでに疎水性固体に結合する蛋白質として同定されていたRolAやHsbAが主な結合蛋白質であることが示された。RolA,HsbAが汎用性のある固体結合蛋白質であることが明らかになったので、RolAとエステラーゼの相互作用部位について詳細に解析し両者の相互作用が静電相互作用に依存することを明らかにした。
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