研究概要 |
1. DSEの泥炭地での生態把握 非培養法としてT-RFLP解析による菌類群集構造解析を行った。亜熱帯地域の鹿児島県屋久島および亜寒帯地域のカナダアルバータ州エドモントンを調査地とした。培養法として釣餌法を用いて宿主植物根部を洗浄し菌株を分離した。さらに、選抜した菌株の病原性の有無、生育促進効果を確認するために接種試験を行った。T-RFLP解析の結果、亜熱帯地域と亜寒帯地域での菌類相が異なることが確認された。また、一般的には、温暖な地域が、寒冷な地域に比べ菌類の多様であるが、今回は両地域とも同程度であった。屋久島土壌から196菌株が得られ、そのうち5菌株をDSE様菌株として選抜し、1菌株をPhialocephala fortiniiと同定した。接種試験の結果、供試した4菌株は宿主に対して病原性を示さず、地下部において明らかな根量の増加の効果が認められた。 2. N2O活性が高い土壌からの菌類-バクテリア共生体の分離 近年真核生物である糸状菌が亜酸化窒素生成活性を示すことが報告された。環境中の糸状菌の亜酸化窒素生成活性を知るためには多くの種の亜酸化窒素生成活性を網羅的に調べる必要がある。本研究の結果、糸状菌種の違いによってN2O活性強度が大きく異なることが明らかとなった。特にHypocreales目に属するMetarhizium, Myrothecium, Clonostachys, Trichoderma,およびFusarium属菌に近縁な分離株に高いN2O生成活性がみられた。以上より、土壌における糸状菌の群集構造は植生などの環境要因の違いによって大きく変化することから、活性の高い糸状菌が優占しないような土壌管理が必要であると考えられた。
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