イネ科のオオムギでのグリシンベタインの合成経路について、コリンモノオキシダーゼ(HvCMO)の遺伝子を酵母で発現させ、リコンビナントHvCMOが酵素活性を持つことを明らかにした。また、イネもグリシンベタインを検出限界以下しか有しないのに、ベタインアルデヒド脱水素酵素(OsBADH)の遺伝子を2個持つ。2個のリコンビナントOsBADHの酵素学的解析の結果、OsBADH1は、ベタインアルデヒドを基質とせず、OsBADH2はベタインアルデヒドを良い基質とした。また、両酵素ともアミノアルデヒドやトリメチルアルデヒドを良い基質とした。さらに、OsBADH1はアセトアルデヒドを良い基質とし、冠水ストレス下でペルオキシソームでのアセトアルデヒドの解毒に関与するという新しい知見を得た(Mitsuya et al.FEBS Lett.2009)。なおOsBADH2はアセトアルデヒドを基質にしなかった。20年度には、オオムギのBADHがグリシンベタインばかりでなく、β-alanineやGABA、カルニチンの前駆体を合成する可能性を明らかにしている。イネのOsBADHsも同様の傾向を示した。植物のBADHが実際どのような生理学的役割をしているかをさらに追求することは重要である。 GBの輸送体(HvProT2)について、研究成果を得た。本輸送体は葉では、メストム鞘細胞で、根では側部根冠で発現した。メストム鞘細胞の役割ははっきりしていないが、アポプラストとシンプラストが切り代わるところで、出現する組織であることから、GBの長距離輸送を含む組織間の輸送に関与することが示唆された。また、20年度の研究で塩ストレス下ではGBは木部柔細胞で合成されることを明らかにしているので、木部柔細胞からメストム鞘細胞への輸送にHvProT2が関与する可能性もある(Fujiwara et al. Planta Online)。
|