研究概要 |
本研究では,地域の有機性資源(木質バイオマス)を用いた担体を,地下水や浸透水由来の水が多く含まれる自然水域において浸漬させ,リン吸着能を持つ鉄バクテリア集積物を担体に担持させた。そして,回収した担体のリン酸肥沃度を評価するとともに,回収した担体のリン吸着能を利用した水質浄化材としての利用可能性を検討した。その結果,予備実験において良好な結果が得られたヒノキとともに,スギの心材においても同様な機能があることがわかった。このことは,中空の細長いパイプ状細胞である仮道管がその構成要素の大部分であることと,鉄バクテリアの選択性にある程度適合した結果であると判断された。また,ヒノキと同様に腐朽菌に対する分解抵抗性のあるフラボノイドなどのフェノール系物質やリグニンなどの組成および含有量が多いことも利点となると考えられた。さらに,木質組織の材質の不均一性に関する知見を得るとともに,熱水加圧処理材の抗蟻性に関する定量を行い,有用なデータを得た。また,本システムの設定条件(担体の量や浸漬期間,および水域の水質)を定式化することの一手段として,水域のリン濃度と,これを規定する流域から流入するリンの量が重要であるので,これを予測するとともに,リンの流出を規定する要因を定量化することを検討した。すなわち,グラスフィルターを用いて採集した土壌浸透水の微細粒子の挙動に関する動力学検討を行い,また,粒度分布の特徴を明らかにした。そして,流域内の営農活動の経時変化に着目し,流域内で栽培されている作物に関するリンの投入量を考慮するためのするため解析を進めた。
|