研究概要 |
本研究では,地域の有機性資源(木質バイオマス)を用いた担体を,地下水や浸透水由来の水が多く含まれる自然水域において浸漬させ,リン吸着能を持つ鉄バクテリア集積物を担体に担持させた。そして,回収した担体のリン酸肥沃度を評価するとともに,担体の材料として,木炭の中でも比表面積が大きく(これまでの木質バイオマスと比べて約300倍大きい),汚濁物質の吸着特性に優れているとされている高波動炭の可能性を検討した。その結果,高波動炭に担持される酸化鉄の量は,これまでの木質バイオマスと大きな差異がないものの,リンの量は2倍程度に増加することがわかった。しかしながら,高波動炭の微細孔構造による比表面積の増加効果が十分に発揮されたとは言えなかった。そしてこれには,鉄バクテリア集積物が担体にフロック状に集積することに理由があると考えられた。さらに,木材の心材部を熱処理することによる木材水抽出液のpHの変化に関する測定を行った。その結果,飽水状態の木材を120℃以上の温度で熱処理することで,pHが著しく減少することが明らかとなった。これは,木材中のヘミセルロースに結合している酢酸等の有機酸が,加水分解により溶出するためであると考えられた。また,本システムの設定条件(担体の量や浸漬期間,および水域の水質)を定式化することの一手段として,水域のリン濃度と,これを規定する流域から流入するリンの量が重要であるので,地下の浸透水の流出を規定する要因を定量化することを検討することを意図して,表土流亡防止のために下方浸透促進技術を施し,土壌浸透水の増減と降雨パターンとの相関から,ある断面における降雨到達時間を評価した。すると,降雨による浸透は未処理区に比べ処理区の方が有意に早いことが明らかになった。
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