研究課題
京都府南部の落葉広葉樹林(山城試験地)において森林のCO2吸収量(NEE)の高精度評価のために、解明の遅れている群落CO2放出量(呼吸量)を微気象学的手法、チャンバー法、生産生態学的手法の3つで比較し、その動態の評価を行った。微気象学的手法では、夜間呼吸量の遺失分の推定手法に依存してNEEは3倍程度変わること、他の手法との比較から複雑地形においては、微気象学的手法で推定する呼吸量はかなり大きめ(u*しきい値=0.4m/sec)に見積もる必要があることが明らかとなった。チャンバー法による土壌表面や樹皮、葉等からのCO2放出量の観測から、全CO2放出量の半分以上は分解に伴うCO2放出(Rh)であることがあきらかとなり、また生きている植物からのCO2放出量(Ra)の中では枝や根の先端部分、特に直径0.26mm以下の非常に微細な細根がCO2放出に大きく関与していることが明らかとなった。また有機物分解にともなうCO2放出に関しては重なり合った落葉の中でも最下層の地表面に接触している部分に高いCO2放出活性があることが明らかとなった。微気象学的手法では現在評価が困難な夜間の移流にともなうCO2放出量の過小評価に関して、林内に2本のCO2濃度観測タワーを設置し、温度場と風速の変動に伴う夜間CO2濃度の変化の観測を開始した。流域内の谷筋に、水平距離で約60mの距離で設置されたCO2濃度計の観測から、冷却大気による下降風(鉛直移流)に伴う林床面付近の夜間CO2濃度の低下は2つのタワー間で高い同調性を示した。また2地点間の間のCO2濃度差は数ppm程度のわずかなヒステリシスをもって同調していた。これは鉛直移流に伴う林床面付近の大気の斜面に沿った水平移流が流域規模の大きなスケールで起きていることを示しており、また水平移流の発現に伴い林内の大気は速やかに横方向に移動していることを示していた。
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