研究課題
動物細胞と細胞外基質間の接着、いわゆる細胞接着は、1)環境センサーと2)環境コントローラーという2つ重要な役割を持っている。細胞は細胞接着により、周囲の細胞外基質の種類、堅さを感知し、自身の運命(生存、分化、運動)を決定している。センサーの異常はがん化に結びつき、センサーを自由に制御できれば、がん治療や再生医療に貢献できる。本年度は、環境センサーとしての接着領域裏打ちタンパク質の機能に着目し、解析を行なった。これまでに、接着領域裏打ちタンパク質ビネキシンノックアウトマウスは創傷治癒過程が遅延することを明らかにしていた。ノックアウトマウスより初代表皮細胞を単離し、in vitroで細胞移動アッセイを行ったところ、ビネキシンノックアウト細胞で細胞運動が低下していることが分かった。細胞運動は、細胞接着による細胞外環境の感知と増殖因子シグナルが重要な役割を持っている。そこで、培養表皮細胞株を用い、ビネキシンの役割について検討した。ビネキシンの発現抑制はスクラッチ(引っかき傷)によって誘導される増殖因子受容体の活性化を抑制した。一方で、スクラッチによって誘導されるMAPキナーゼの活性化には影響しなかった。また、移動している細胞の先端部に増殖因子受容体は局在したが、ビネキシンの発現抑制はこの局在を抑制した。以上の結果からビネキシンは創傷によってできる新しい環境(新しい細胞-細胞外基質間接着の形成など)を感知し、増殖因子受容体の局在を制御することで細胞運動を制御している可能性が示唆された。
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Cancer Lett (in press)
J Biol Chem 283
ページ: 30057-30063
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http://www.biochemistry.kais.kyoto-u.ac.jp/