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2010 年度 実績報告書

メタボリックストレスによる細胞極性の破綻と増殖停止の分子機序

研究課題

研究課題/領域番号 20380187
研究機関京都大学

研究代表者

井上 善晴  京都大学, 農学研究科, 准教授 (70203263)

キーワード酵母 / 代謝 / ストレス / 細胞分裂 / 極性成長 / ホスファチジルイノシトール
研究概要

私はこれまでに、解糖系から生成する代謝物メチルグリオキサール(MG)が、種々の転写因子の活性化や細胞内シグナル伝達系に影響を及ぼすことを出芽酵母や分裂酵母をモデル生物として見いだし、その分子メカニズムの一端を明らかにするとともに、代謝物によるシグナル伝達機構「メタボリックシグナリング」という概念を提唱してきた。本研究課題では、これらの解析の過程で、出芽酵母を用いて新たに発見したMGが引き起こす3つの現象(ホスファチジルイノシトール代謝の変動、細胞極性の消失、スピンドル極体(SPB)の分配異常)について、その分子メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。これまでの研究から、MG処理によってアクチンパッチがbud tipから細胞全体に拡散してしまい、細胞極性が消失し、細胞増殖、とくに核分裂が停止することを見いだした。そこで本年度は、アクチンの極性制御に関与するシグナル伝達系に及ぼすMGの作用と核分裂に関して、以下の2つの課題を実施した。
(1)細胞極性に関与するPkc1/Mpk1-MAPKシグナル伝達系に及ぼすMGの影響
アクチンの組織化にはプロテインキナーゼC(Pkc1)と、その下流で機能するMpk1-MAPKが関与する。そこで、MGがこれらのプロテインキナーゼの活性化に及ぼす影響を検討した。その結果、MG処理によりMpk1のリン酸化が起こった。そのリン酸化は、pkc1Δ株では起こらなかったことから、MGがPkc1/Mpk1シグナル伝達系を活性化していることを明らかにした。さらに、pkc1Δ株やmpk1Δ株のMG感受性を比較したところ、これらの変異株では野生株に比べMG感受性を示した。
(2)Pkc1/Mpk1-MAPKシグナル伝達系と核分裂
MGにより極性成長が阻害され、それと同時に核分裂が阻害されるが、このとき細胞は細胞周期のG2/M期で停止したような細胞形態を示す。そこで、細胞周期進行に重要な役割を果たすサイクリン依存性プロテインキナーゼCdc28の活性状態を検討した。その結果、MG処理によりCdc28のTyr19がリン酸化された。またそのリン酸化は、swe1Δ株では起こらなかった。また、Pkc1の構成的活性化変異体導入株では、MGによる核分裂阻害が部分的に抑圧された。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011 2010

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Glyoxalase system in yeasts : Structure, function, and physiology.2011

    • 著者名/発表者名
      Inoue, Y., Maeta, K., Nomura, W.
    • 雑誌名

      Seminars in Cell & Developmental Biology

      巻: (印刷中)

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Acetate but not propionate induces oxidative stress in bakers' yeast Saccharomyces cerevisiae.2011

    • 著者名/発表者名
      Semchyshyn, H.M., Abrat, O.B., Miedzobrodzki, J., Inoue, Y., Lushchak, V.I.
    • 雑誌名

      Redox Report

      巻: (印刷中)

    • 査読あり
  • [学会発表] ホスホリパーゼCとTORC2を介したPKC制御機構の解析2010

    • 著者名/発表者名
      野村亘、井上善晴
    • 学会等名
      第33回日本分子生物学会年会・第83回日本生化学会大会・合同大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2010-12-10

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公開日: 2012-07-19  

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