研究概要 |
本年度は、二核性インドールアルカロイド、(+)-haplophytineの全合成を達成することができた。容易に合成可能な光学活性テトラヒドロベータカルボリン誘導体をヨウ化インドレニンへと導き、アニリン誘導体とのFriedel-Craftsアルキル化反応を用いて2つのセグメントの結合部にあたる第四級炭素を構築した。その後、数段階の変換を経て得られる1,2-ジアミノエテン構造を含む化合物をm-CPBAを用いた酸化条件に付したところ、二重結合のエポキシ化に続いて、窒素原子によるエポキシ環の開裂、セミピナコール型の転位反応が進行し、アミナールや架橋ケトンを含むhaplophytineの左部セグメントの構築に成功した。一方、haplophytineの右セグメントの構築には3環性アミノケトンと上記方法で合成した左部セグメントの対応するヒドラジン誘導体とのFischer indole合成反応を用いて行った。3環性アミノケトンの合成には、まず、11員環第2級アミンを構築し、分子内アルデヒト、ケトンとのMannich反応を用いることで単一立体異性体、として合成することに成功した。続いて、合成した2つの中間体をFischer indole合成反応を用いることで縮合し、haplophytineの骨格の形成を行った。なお、Fischer indole合成反応を行う際に、反応の位置選択性の問題が生じたが、溶媒、反応温度、用いる酸の種類を詳細に検討した結果、望みのインドレニン体を優先的に得る条件を確立することができた。最後に、ラクトン環の形成を含む種々の官能基変換反応を行い、(+)-haplophytineの世界初の全合成を達成することができた。また、ラジカル転移環化反応を用いたスピロアミナール骨格の構築法を鍵工程として、顕著な生理活性を示す海産性アルカロイドであるレパジフォルミンの全合成を達成した。
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