エーテル結合は代謝等に抵抗性を示すため医薬品の部分構造として多く用いられるが、その合成はアルコキシドとハロゲンまたはその等価原子化合物とのカップリング反応を用いるWilliamson合成法が主流である。しかしながら本法は強塩基性条件下での反応であるためアルカリ性で分解する官能基を持つ化合物には適応できない。また立体的影響を強く受けるため多置換エーテルの合成には用いることができなかった。その後、種々の合成法が開発されてきているが、それぞれに改良すべき点を有していた。そこでアセタール由来カチオン性塩を利用するエーテル化合物の効率的合成法の開発研究を行った。 1)水酸基をMOM化した化合物をTMSOTf-2-halo-pyridineの組み合わせ条件で処理して生成する中間体塩を有機銅試薬と反応させると、炭素種が求核置換反応を起こし、高収率でエーテル化合物を与える事を見出した。本法は、非常に緩和な反応であり、従来法では用いることができない官能基を持つ化合物でも問題なく進行する。また従来法ではその合成が困難な混み合ったエーテル化合物をも高収率で合成することができた。 2)申請者らは既に混合アセタールの効率的な合成法を開発している。そこで混合アセタールの選択的還元反応によるエーテル結合合成法を見出した。即ち、一方のアルコキシ基がメトキシ基の混合アセタールをTMSOTfとピリジン型塩基で処理するとメトキシ基が選択的にピリジン型塩基で置換されたピリジニウム型中間体が生成した。ついでこの反応液にNaBH4を加えるとエーテル化合物が高収率で生成した。本法も非常に緩和な反応であり、従来法では用いることができない官能基を持つ化合物でも問題なく進行する。
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