研究概要 |
(1)有機合成技術開拓の分野ではトリアジン/第3級アミンを用いた分子触媒への展開を目指して新しい触媒開発を行い,反応性や機能導入の簡便性などの点からいくつかの有力候補となる触媒骨格を見出した。これらは従来までのジメチルグリシン構造と比べて,触媒活性が高く,安定で様々な機能性分子への導入が容易である。この研究は現在も詳細を検討中で次年度に,学会,論文等での発表を予定している。また,DMT-MMを用いた応用として,水中でのペプチド合成や,低分子量のカルボン酸イオンの定量分析法について企業の協力を得て進めその成果について発表した。また,トリアジンをユニットに有する新規ホスト化合物を合成しその構造解析を行ったところπ系の共役した平面構造をとっていることが分かった。 (2)不斉合成技術として前年度に合成した不斉クラウン型触媒を用いた不斉ラクタム化反応を行ったが,基質の溶解度など新たな問題点が出てきたため分子間のアミド化反応も視野に入れた対応を検討中である。 (3)生体機能解析技術では,非常に簡便な新しいタンパク質標識化法としてモジュール式アフィニティーラペル化法(MoAL法)の開発に成功した。従来型のアフィニティーラペル化法では,タンパク質と相互作用するリガットに目印となる標識部位とタンパクと共有結合形成をする反応性部位の両方を有する化合物(アフィニティープローブ)を必要とするが,この複雑な化合物の合成が本法の大きな障害の一つになっていた。そこでこれらの部位を別々の分子に切り離すことによって,プローブ合成の簡単な方法を開発した。標的のタンパクに応じてこれらのモジュール分子を適宜組み合わせて混ぜるだけで特異的なラベル化が進行することを明らかにした。今年度はアビジンービオチン系をモデルに用いた成果についてChemComm誌に報告した。
|