研究概要 |
本年度はLOX-1の基質認識機能の精密化を進めLOX-1特異的に結合する人工リポソームの作成に成功した 1.LOX-1の基質認識機構の精密解明:LOX-1が細胞上で集積構造を取る.この集積構造の酸化LDL認識おける役割を明らかにするために表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いて,酸化LDL認識における集積構造の必要性を定量的に明らかにした.この結果,LOX-1一分子では,細胞上で観測される結合能よりも4桁低い親和性しか持たないのに対して,streptavidinを介して人為的にLOX-1を集積化した場合には,細胞上で観測される酸化LDLに対する親和性を再現できた.この知見に基づいて,さらに金薄膜上の自己集積化単層膜を作成し,その上に配置したLOX-1受容体に対する酸化LDLの結合能測定したところ,細胞膜状でのLOX-1と同等の親和性を再現できた.また,単層膜上におけるLOX-1の量に応じて結合能が変化することも観測しており,この実験からLOX-1の集積構造が基質認識に必要であることを確認した.またこの測定系を用いて,単層膜リポソームにより酸化LDLの1000倍の結合能を持つ人工粒子の作成に成功した. 2.LOX-1の集積構造形成機構と輸送機構の解明:LOX-1の膜貫領域内にあるCys36,並びにCys46がパルミトイル化されることにより効率的にラフトへ輸送されていることが明らかとなった。一方、LOX-1に取り込まれた酸化LDLが、細胞内輸送の初期過程において、ラフトを介した輸送系により取り込まれることが知られているCT-B(コレラトキシン・サブユニットB)と同一小胞内に存在することが共焦点レーザー顕微鏡でも確認された。 3.MRI画像法の開発:含鉄タンパク質であるフェリチン分子を陰性造影剤として用いる場合の定量法について、フェリチンをアガロース、またはゼラチンのゲルに添加した場合の横緩和速度R2と鉄濃度[Fe]の間の実験式を1.5T,4.7T,11.7T,18.8Tの各磁場強度で求めた。この結果、R2と[Fe]の線形相関の係数は磁場に比例して増大することがわかった。上記人工LDL粒子によるMRI測定のトライアル実験を進めた.
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