研究課題/領域番号 |
20390013
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
際田 弘志 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50120184)
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研究分担者 |
石田 竜弘 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50325271)
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キーワード | DDS / リポソーム / ポリエチレングリコール / 抗PEG-IgM / 免疫反応 / ナノキャリア |
研究概要 |
本研究は、研究代表者らが明らかにした新事実、即ち"bio-inertであると考えられてきたPEGによる免疫活性化"の機構を解明し、PEGあるいはその他類似の高分子を用いた医薬品開発に寄与する情報を提示する事を主たる目的としている。マクロとミクロ(ナノ)の間で、生体反応性に臨界があることはナノトキシコロジーでは常識となっているが、PEGなどのbio-inertな高分子による修飾がなぜ生体反応性を亢進させるか明らかでない。この点を解明し、生体適合性が高く安全な独自のナノデバイスの開発を実現させるとともに、現在行われているナノ粒子を用いた多くのDDS研究の実用化や安全性の確立に寄与する情報を発信することを目指す。 当該研究期間において、PEG修飾リポソームによるB細胞活性化機構の解明を目指して検討を行った。PEG修飾リポソーム投与4日後に蛍光色素(DiI)でラベルしたPEG修飾リポソームを再度投与して脾臓B細胞への結合状況をフローサイトメーターで観察したところ、IgM+のB細胞にPEG修飾リポソームが結合していることが観察され、初回PEG修飾リポソーム投与によってPEGに親和性を持つIgMを発現したB細胞が脾臓内で増加していることが分かった。また、前述の条件で処置した脾臓組織切片を蛍光顕微鏡下観察したところ、PEG修飾リポソームを結合したB細胞は脾臓辺縁帯から濾胞へと活発に移動していることが分かった。この事から、PEG修飾リポソームによる刺激を受けた脾臓B細胞は、抗PEG IgMを分泌するだけではなく、次に侵入してくる抗原(PEG修飾リポソーム)を結合し、濾胞に存在する樹状細胞などに抗原を送達する準備もしている可能性が高い事が示唆された。この知見は、全く想定外のものであり、新たな概念に基づくワクチン開発にもつながる重要な情報である。
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