本年度は、人工遺伝子デリバリーシステムであるMENDによるin vivoでの遺伝子発現系の確立に重点を置き、レポーター遺伝子および治療遺伝子(プレプロインスリン)のin vivo遺伝子発現の検討を行った。まず、in vivoにおいて十分な遺伝子発現量を達成するために、糖を共存させることによるMENDの凍結乾燥と、低容量再水和による濃縮MEND懸濁液の調製法を確立した。ルシフェラーゼ遺伝子を封入したMENDを無針注射器等を用いてマウスの皮内および筋肉層に導入し、導入部位におけるin vivo遺伝子発現を評価した。その結果、naked DNAを単独で投与した場合に比べて持続的なin vivo遺伝子発現を誘導することに成功した。また、細胞内でプレプロインスリンを効率よく切断しインスリン成熟化を促すための切断酵素(フリン)遺伝子のプラスミドを作成した。このフリン遺伝子プラスミドとプレプロインスリン遺伝子プラスミドを共封入したMENOを調製し、培養細胞(in vitro)にトランスフェクションした後、RT-PCR法によってプロインスリンmRNAとフリンmRNAの発現を確認するとともに、Western biotting法によって成熟化インスリンが産生されることを確認した。さらに、プレプロインスリン遺伝子を封入したMENDを投与し、プレプロインスリン遺伝子の発現を評価するため、皮膚および筋肉組織中のmRNA量をリアルタイムPCRを用いて定量した。その結果、プレプロインスリンmRNAの有意な発現を確認した。また、糖尿病モデルマウスを作成し、MENDを投与した後の血漿中のインスリン量をELISA法によって定量した結果、MEND投与によるインスリン量の増大を確認した。これらのことから、本年度は当初計画通り、MENDによるin vivoにおける遺伝子発現を検討し、レポータータンパク質およびインスリンの発現を確認することに成功した。
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