研究課題
プロスタグランジン(PG)類の生体作用には、いまだ未知の機能が存在し、既知作用についてもその分子メカニズムは不明であった。そこで本研究では、シグナル伝達系を同じくする複数のPG受容体を同時に解析しPGの新規作用を探索するとともに、作用発現の分子機構の解明を試みた。以下に21年度の成果を示す。1. 炎症惹起・免疫増強-EP2/EP4受容体…(1)EP2/EP4受容体がPl-3キナーゼ活性化を介してTh1分化を増強すること、(2)EP2/EP4受容体がE-pacを介してTh17エクスパンジヨンを増強すること、さらにEP4受容体がPKAを介して樹状細胞からのlL-23産生を増強することを発見し、これらの作用が接触性皮膚炎や多発性硬化症などの炎症性疾患の発症・進展に重要な役割を果たすことを示した。2. 受精-EP2受容体…EP2欠損マウスから回収した卵丘細胞を解析した結果、PGE2-EP2シグナルはケモカイン産生を抑制することで受精を促進すること、ケモカインは卵丘マトリクス(ECM)を強化して卵を保護する一方、受精時には精子侵入を阻害することを発見した。さらにケモカインによる卵丘マトリクス強化の分子機構として、卵丘細胞のCCR1/2受容体を介してRhoA/ROCK/アクトミオシン経路を介してインテグリンを活性化し、これが卵丘ECM中のマトリクス蛋白のアセンブリーを促進することを見出した。3. EP3受容体によるcAMP産生増強の分子機構…EP3受容体は、多くの細胞でGiを介してcAMP産生を抑制するが、ある種の細胞ではGqと共役し細胞内Ca2+動員とCaMキナーゼを介してアデニル酸シクラーゼ活性化を増強すること、さらにこのEP3の作用は、caveolin-1を構成タンパク質とするlipid raft依存的に引き起こされることを見出した。
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http://square.umin.ac.jp/yseika/gyosekis/sugimoto'slist.html