1. 培養大脳皮質-線条体組織切片を用いて、トロンビンによる線条体組織傷害とミクログリア活性化との関係について解析した。トロンビンによって線条体ニューロンにアポトーシスが誘導された。カスパーゼ-3阻害薬によるアポトーシスの抑制や、サイトカラシンD等によるミクログリアの貪食能の抑制は、トロンビンによる線条体組織萎縮を有意に抑制した。一方で、トロンビンはMAPキナーゼ阻害薬の存在下においてのみ線条体ミクログリアにカスパーゼ-3非依存的なアポトーシス様細胞死を誘導した。また、トロンビンは培養組織切片にTNF-αの産生を誘導し、これは各種MAPキナーゼ阻害薬によって抑制された。さらに、トロンビンによる線条体ニューロンのアポトーシスはTNF-αの中和抗体によって著明に抑制された。これらの結果は、MAPキナーゼ群が活性化ミクログリアの生存を維持することによって線条体組織傷害の進行に寄与すること、また活性化ミクログリアがその貪食能に加え、TNF-αの産生遊離を介して組織傷害をもたらすことを示唆した。 2. コラゲナーゼ微量注入によるマウス脳内出血モデルを用いて、レチノイド受容体作動薬Am80の作用を検討した。Am80の連日経口投与を出血惹起の前日から、あるいは出血惹起の6時間後までに開始すると、3日後の血腫内残存ニューロン数が有意に増加した。Am80は出血量や脳浮腫の程度には影響を及ぼさなかった。レチノイド受容体RARαの発現は活性化ミクログリア・マクロファージに認められ、またAm80を投与したマウスでは血腫周縁部における活性化ミクログリア・マクロファージの増加が有意に抑制されていた。さらに、Am80は出血後のマウスの神経症状および運動障害からの回復を有意に促進した。これらの結果から、レチノイド受容体がミクログリアの制御を介する脳内出血治療薬ターゲットとして有望であることが示された
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