研究概要 |
脳神経等の興奮性細胞では、強い刺激と興奮により細胞にCa^<2+>負荷が生じた場合、自己防衛的にスパイク発生頻度を減じてCa^<2+>過負荷による細胞障害を回避するシステムが幾種か存在する。特にCa^<2+>活性化K^+チャネルはその活性化により、過分極を介して電位依存性Ca^<2+>チャネル活性を低下させるため、多くの興奮性細胞において最も基本的な[Ca^<2+>]i負帰還調節機構を担う重要な分子と認識されている。本研究はCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子制御機構の解明を基盤とした創薬研究を目的としている。20年度は次の事柄を明らかにした。 (1)本研究室で見出したBKチャネル開口薬が、ミトコンドリアに発現するBKチャネルの活性化を介して、心筋の虚血性障害を軽減することを明らかにした(Sakamoto et al, JPS,2008)。 (2)男性ホルモンによるイオンチャネルの発現変化を検討した結果、生殖器平滑筋のBKチャネルやRyRの発現が男性ホルモンによって大きく影響されることを見出した(0hno et al, JPS, in press)。扁桃体におけるBKチャネル発現に性差が関係していることも明らかにした(Ohno et al, BBRC,2009)。前立腺ガンの悪性度とK^+チャネル発現の相関をプロファイルした(Ohya et al, JPS,2009)。 (3)免疫系細胞における電位依存性K^+チャネルの分子機能を明らかにし、このチャネルの活性制御が自己免疫疾患の治療に応用できる可能性を提示した(Matsushita et al, BBRC,2008;AJP, in press)。 (4)形質変化する血管平滑筋のイオンチャネルや受容体は、動脈硬化発症時や糖尿病時、癌細胞の転移・増殖に関わる血管新生時を標的とした新規治療薬の開発につながる可能性を提起した(Tanaka et al, JPS,2008a;2008b)。
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